ヤサシイワタシ/何度でも

cajolery2008-09-17


三回だ。一度会ったら友達で毎日会ったら兄弟だ? ひぐちアサ「ヤサシイワタシ」は大学生の主人公"芹生"から彼が胸にしまいこんだ本音を引き出すまでの話で、さんざん大学生ライフを描いたあとで、それは外部から闖入してきた中学生の女の子"澄緒"によって成される。都合三回。これは芹生と澄緒の本音トークの回数だ。それだけの回数を積み重ねなければ芹生は本音を吐露できなかっただろうし、三回もセッションできるほどのキャパを幼い澄緒がもちあわせていた。これが酷く美しい。

芹生の本音をダウンロードしたら、読者は本書をもう一周読みこむべきだ。本書は芹生の本音を知っている人間が書いたが、一周目の読者は芹生の本音など知らない。ギャップが埋まり同期すると見えてくることがらもある。ぜひ再読をお勧めしたい。